第1話

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 今年で18になる俺は同い年のペットがいる。  そのペットは俺が生まれた日と同時に両親が飼ってくれたペットだ。  だが最近は元気がなく餌も喉を通っていないようだ。人工的な餌ではやはりだめなのだろうか。  それとも本来住むべき自然に暮らしているのではなく、狭い檻の中に入れられ身動きも碌に取れないので体が弱体化してしまったのだろうか。あるいはその両方かもしれない。  なんだか可哀想だな。  ふと、そんなことを思った。  俺は生まれてから自分のやりたいことや色々と楽しいことをたくさん経験している。  自由にスポーツをやったり、休日は外に買い物にいったり、好きなものを食べられたり。  だがこいつはどうだろうか。  碌に動き回ることも出来ず、人間によって監禁され木の上から下を見下ろすことも出来ないでいる。  俺と同じ月日を過ごしてきたっていうのにこいつは今までに本当の幸せを経験したことがあるのだろうか。  別に両親を責めるつもりはない。  こいつのおかげで俺もつらいことがあった時などは慰められ、感謝している。  だが、そろそろこいつも幸せになる番だ。俺はそう思った。  俺は外に出るとピー子がいるゲージの扉をおもむろに開けた。  最初は開かれたゲージにどこか戸惑っていたように見えたピー子だったが、俺の意図が分かったのだろうか。ピー子はゆっくりとゲージの扉へと近づいて行った。  そしてゲージからゆっくりと抜け出したピー子は、俺を振り返ることもなく本来の住むべき場所へと帰って行った。  じゃあなピー子。  数日後、テレビを見ていた俺にショッキングなニュースが流れ込んできた。ピー子が数人の男によって捕獲されていたのだ。  テレビのニュースキャスターが大きな声でその様子を伝えていた。 「どこかの家から逃げ出したと思われる、ただいま捕獲された大蛇は町の子供を襲い、飲み込んだとみられています!」
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