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だが、それで命を狩ることはできない。
頭が一回転しても女は倒れることはなかった。
「もう一度……」
私が霊符に力をこめるよりはやく。
女は地面を蹴った。
私の頭上を越えて後ろに着地した女は自分の頭を掴む。
ごきゃっ、と頭をあるべき方向へと向け、にや、と笑った。
『お嬢。命を確実に狩らないと彼女、“角持ち”になって強くなりますよ?』
「……うるさい」
私は小さく言った。
「見てないで少しは手伝ったら?」
『俺は戦闘能力は低いので。ここはお嬢に頑張ってもらうしかありませんね』
「どこが」
私はぎり、と奥歯を鳴らした。
私より強いくせに。
『それに俺が手伝ったらお嬢の成長を妨げることになりますからねー』
実に楽しげである。
いつもそれだ。
リクヤはそれですます。
「あとで覚えてなさいよ?」
『はいはい』
ホント、腹が立つお目付け役だ。
☆
暗闇に紫色の軌条が走る――三本ほど。
目の前に迫った女の爪を避けつつ、私は霊符を解き放つ。
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