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「――炎よ、舞え――」
霊符が燃え、蝶の姿をした炎が二匹、闇夜を照らす。
女は肉を焼かれても怯まず、私に掴みかかろうとする。
爪が私に迫る。
避けた私の服の胸あたりを爪が裂いた。
血が舞うことはしなかったけど白いブラが少しだけ露になる。
『うむ』
リクヤは何やら小さく呟いている。
『ちまい』
「ブッ殺すわよ、リクヤ!」
『おっ、いまだかつてない殺気が。それを“鬼堕ち”に向ければ余裕で勝てそうですね』
それは無理。
殺気の質が違うからだ。
「あなた、帰れ」
『それはできませんねー。俺の役目は――』
「ただ見ているだけなら必要ない」
リクヤと不毛(?)な会話をしている間も女は私に襲いかかる。
肉薄はそれほど不得意てはないけど相手は異形の者、まともにぶつかるわけにはいかない。
爪が空気を引き裂き、私を追いつめる。
私は屋上の端に立った。
『お嬢。そこにいたら逃げられませんよ?』
リクヤの呆れたような声。
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