アマネ【その一】

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☆ 私、鳴海 アマネ【なるみ・あまね】は夜が嫌いだ。 その理由は大抵の人間が寝静まった真夜中でも私は行動しないといけないからだ。 別に私が不良少女だからではない。 それは私の家系の事情というやつである。 退鬼師……名前の通り鬼を退治するのが私たちの仕事。 鬼は明るい時より夜に行動することが多い。 そのため私たち退鬼師は見回りもかねて夜、街中を歩く。 ホント、高校生の私にとって鬼という存在は迷惑でしかない。 普通の家系に生まれたかったと、常日頃から思う。 鬼も人間と同じように感情があるらしいから、夜はおとなしくしていてほしい。 まあ、朝昼に動かれても学生の私は対応できないけれど。 ☆ 赤い月というのは昔から“不吉”の象徴である。 赤い月の晩は必ず奇妙なことが起きる。 だからほとんどの人間は本能的にそういった夜は出歩くのを避け、反対に鬼は活発に動く。 私はとある雑貨ビルの屋上に立ち、ぼんやりと赤い月を見上げていた。 満月であるがほの暗さを覚える。 視界は悪く、闇に乗じて何者かが潜んでいるのが分かった。
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