アマネ【その一】

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彼の家系は代々、鳴海家に仕えてきた。 昔から。 リクヤは私にとっては兄みたいな存在だったけど、私が退鬼師の仕事をするようになって“壁”のようなものを感じた。 守家は戦う力より、鬼の感知に優れている。 守家の中でリクヤほど感知の“才”がある人はいないかも知れない。 “結界”や“皮”を被ってない限りリクヤは鬼の気配を探り、知ることができる。 リクヤは宙に浮かんでいるように見えるけど、私は知っている。 ビルとビルの間に、数えくれないほどの糸が張り巡らされてるのを。 それは肉眼で捉えるのが困難なくらいに細く、ワイヤーより丈夫な糸。 リクヤは“霊糸”……「れいし」などと呼んでいる。 自分の霊気を糸にしたものとリクヤは言っていたけど、私にはどういった力のか分からない。 一人前の退鬼師とはいえまだまだ未熟な私より現時点では彼のほうが実力が上。 霊力を“借りた”“武具”を扱うことしかできない私とは違う。 私はいつも思う。 優秀な感知能力があり“霊糸”を使うリクヤなら私より優秀な人に仕えることもできるのに、と。
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