アマネ【その一】

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反射的に座る私。 床に手をついてから私は表情をしかめた。 昔、お母様に言われたことを思い出したから。 お母様曰く―― 『あなたはまるでわんこみたいな性格ですねー』 と言われたことがあるけど、クールの私に向けて言うセリフではない。 私がため息をしていると。 ぎむっ、と私の頭上で空間を爪で引っ掻くような音。 私の上を何かが通過する。 生暖かい風が私の髪を揺らした。 リクヤが声をかけなければ私の命はなかったに違いない。 私は慌てて立ち上がり、後ろに後退しつつ前方を見る。 まず私の目が捉えたのは血のように紅い光――否、それは目。 妖や鬼の特徴。 私より大きな“それ”は輪郭からして女性のように見える。 年齢は三十代前半、色の抜けた白い残ばら髪が風で揺れている。 彼女の身を隠しているぼろ布のようなものはかつてはスーツのような服だったのだろう。 彼女の目は顔の真ん中に一つ、肌は浅黒い。 私は知っている。 彼女が“何なの”か。
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