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ゆっくりと離れた創は、少し照れくさそうに笑った。
そして私の手を握り、足元に落とされていた鞄を拾い上げた。
「送る」
創の言葉にこくりと頷く。
私たちは玄関に向かって歩きだした。
車に乗るまでの間、私たちに会話はなかった。
いつものように私を助手席にエスコートすると、私の鞄を後部座席に置く。
そして、運転席に回ってきた創はちらりと私を見た。
その優しい眼差しに、私の心臓は相変わらずどきりと動いた。
「シートベルト」
イタズラな瞳で言う創に、私は慌ててベルトを探した。
「なんだ、また着けて欲しいのかと思った」
カチリとベルトを閉めると、創がからかうように私の顔を覗き込む。
「ち、違うからっ」
ベルトをぎゅっと握り締めながら答えた私に、創はくすりと笑みをこぼした。
さっきまでのぎこちない雰囲気が消えて、私たちは顔を見合わせて笑いあった。
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