赤と黄色のご馳走

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窓の外が暗くなるまで、部屋に、男2人の息遣いが聞こえていた。 暗くなった部屋の明かりをつけて、ぐったりベッドに横になる。 肩まで布団を掛けてくれる深瀬さんは、休むことなくキッチンに行ってオムライスを作ってくれた。 2人で談笑しながらそれを食べるんだけど、ベッドで抱き合うのと同じくらい、こうして誰かと食事をする時間が好きだった。 「仕事、大変そうだね」 「馬木くんも経験することだよ」 「じゃあ、他人事だと思えるのは今だけだ?」 会ってない間、深瀬さんは仕事が忙しくて会社に泊まることもあったらしい。 俺は、大学とバイトの両立は案外辛くないってことを話した。 それからテレビを見て、暫くダラダラと時間を過ごす。 「さて、と。明日も早いし、そろそろ帰るよ」 「俺も、バイトの休みくらいは真面目にレポート作るかな」 「ハハ。バイトもいいけど、ちゃんとレポート出して単位取らないと進級出来ないよ?」 キッチンの前を通って狭い玄関で腰を下ろす深瀬さんは、靴を履きながら俺の心配をしてくれる。 「大丈夫だって。ちゃんと上手くやってる」 玄関の外まで見送りに出て、アパートの階段を下りる深瀬さんの後ろ姿を見送る。 部屋の前の手すりに腕を乗せて下を見下ろすと、片手を上げた深瀬さんが暗闇に消えてった。 時折冷たい夜風が吹いて、俺は早々に家の中に引っ込む。
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