赤と黄色のご馳走

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「だぁー……から、静かにしてくれ……」 俺の要求がようやく伝わって、両手で口を塞ぐ堀内はコクコクと首を縦に振る。 「なんのプリント? 誰から預かったの」 「あの、用があって昼間大学に行ったんですけど、山中教授がセミナーを開いてたみたいで。教授と会った時に、馬木さんに渡してほしいって渡されたんです」 「山先に? なんで堀内に……てか、アンタはセミナーを受けたわけじゃないの? 何しに行ったの」 気になったから聞くと、目を反らされた。 「やま、山中教授とはキャンパス内で会って。多分、馬木さんと同じ講義を取ってるから、私に託したんだと思、」 「うん。で、堀内は何してたの? 日曜は校舎に入れないだろ?」 「あ……と」 堀内の目がキョロキョロと動いてじっとしない。 「いや、うん。別にどうでもいいけども」 「どう、でも……」 そこら中を泳いでいた堀内の視線が下に落ちていくのを見て、言葉の選択に失敗したと思う。 「あー……」 意味のない声を出しながら俺は、内心面倒臭いなと頭を掻いた。 「これ、ありがと」 「は、はい」 山先のプリントに目を落とす。 前に、レポートに必要な資料を頼んでおいたんだった。 ちょうど今からレポートに取り掛かるところだったし、届けてもらって助かった。 「あの……」 プリントに落としていた視線を上げる。 「馬木さんは、お兄さんがいますか?」 「……や、いないけど」 「そ、そうですか」
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