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「なに」
「う、ううん」
「気になるだろ。言ってよ」
「……」
「なに?」
「さっ……きの、人」
たどたどしく堀内の口から出てきた言葉に、頭の中でさっきを振り返る。
数分前、俺は深瀬さんと家を出て、帰っていくその背中を見送った。
あぁ――。
すぐに、堀内が急に“兄はいるか”と聞いてきた意図が分かる。
見てたのか。
「友達……」
「じゃないよ」
答えると、張り詰めたような顔がそのまま固まる。
「最初に言ったよね」
“俺は女を抱くなんて無理だから、今まで通り、男と関係をもつと思う。それでもいい?”
「堀内あの時、うんって言っただろ?」
出来るだけ柔らかい口調で言うと、はい、と堀内から元気のない声が返ってくる。
俺は一度空を仰いで、鼻からため息を吐く。
「な? こんな男最低だろ? 別れる?」
堀内を見下ろして言うと、段々下がっていた顔が勢いよく上げられる。
「全然、気にならないよ」
そんな顔、全然してないけどね。
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