359人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
家から男と出てくるところを見ておいて、まだ俺と別れる気にならないらしい。
「これ、ありがと。助かった」
「う、ううん。夜に、ごめんなさい。大声も出しちゃって……。部屋に来ないでって言われてるから、どうやって渡そうかずっと考えてたんです。そしたら馬木さん達が部屋から出てきてね、よかったぁ」
へへ、と微笑む堀内の顔を、じっと見つめる。
「じゃあ、部屋戻るから」
「あ、はい。気を付けて」
「や、それはこっちのセリフ」
「私は大丈夫だよ。じゃ、じゃあ。バイバイ」
くるりと反転してアパートの敷地から出ていく堀内。
コンクリートの小さな凹凸で躓いている様を見ると、この場合家まで送ったほうがいいんだろうかと考えてしまう。
プリント届けてくれたわけだし。
――まぁ、いいか。
暗闇に消えていく堀内の後ろ姿を流し目で見ながら、俺は部屋へと戻った。
最初のコメントを投稿しよう!