赤と黄色のご馳走

14/14

359人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
家から男と出てくるところを見ておいて、まだ俺と別れる気にならないらしい。 「これ、ありがと。助かった」 「う、ううん。夜に、ごめんなさい。大声も出しちゃって……。部屋に来ないでって言われてるから、どうやって渡そうかずっと考えてたんです。そしたら馬木さん達が部屋から出てきてね、よかったぁ」 へへ、と微笑む堀内の顔を、じっと見つめる。 「じゃあ、部屋戻るから」 「あ、はい。気を付けて」 「や、それはこっちのセリフ」 「私は大丈夫だよ。じゃ、じゃあ。バイバイ」 くるりと反転してアパートの敷地から出ていく堀内。 コンクリートの小さな凹凸で躓いている様を見ると、この場合家まで送ったほうがいいんだろうかと考えてしまう。 プリント届けてくれたわけだし。 ――まぁ、いいか。 暗闇に消えていく堀内の後ろ姿を流し目で見ながら、俺は部屋へと戻った。  
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

359人が本棚に入れています
本棚に追加