霞む瞼の裏

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「どうした馬木、ボーッとして」 「んー、してないよ」 友人に突っ込まれても、直視をやめない。 うん、やっぱり。 あれは堀内と……誰だ? 痩せて鉛筆みたいな男と話をしているのは堀内で、男の方も同じ学部内で見たことがあるような……ないような。 まぁ、話をしてるっていっても、堀内はずっと俯いていて、その素振りを見ていれば男の一方通行っぽい。 男ねぇ。意外だな。 俺の皿のカレーが半分になった頃、堀内と男の会話が終わったみたいだ。 堀内は1人、こっちに向かって歩いてくる。 モクモクと口を動かしながら見ていると、堀内が顔を上げた瞬間に目が合った。 「あ、こんにちは」 「……ちは」 友人の1人が『誰?』と聞いてくるが、俺は『堀内』と答えるだけで、彼女だと紹介することはない。 嘘はついてないよ。 こいつは堀内だ。
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