霞む瞼の裏

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「な、なに食べてるんですか?」 “大学では話そ” その俺の傲慢な言葉に文句も言わず、あれから、堀内から話し掛けてくることが増えた。 相変わらず噛むし、敬語も抜けないけど。 「激辛カレー。食べる?」 友人に対するノリで、何気なく言ったんだ、俺は。 なのに堀内からは何の返答もなく、その代わりに、真っ赤にさせた顔が俺を見下ろしてくる。 「食べる前から赤くしてどうするんだよ……」 「ヘヘ。あの、ちょうど何を食べようか悩んでたので、頼んできます。ありがとう」 「え」 そそくさと注文を言いにいく堀内の姿を追いながら、食えるの?と一瞬、いらぬ心配をしてしまう。 「もしかして、馬木って辛いの得意?」 「あー、得意ってこたないけど、嫌いじゃない」 「汗1つかいてないし。俺なんて、さっき食った一口で汗出てるよ」 「肌寒くなってきたし」 「ハハ、季節関係ねぇって」 友人と談笑していると、暫くして堀内が戻ってくる。 両手でトレーを持って、向かいのテーブルに1人で座った。 手を合わせる堀内は俺と目が合うと、へにゃっといつものように柔く頬を緩める。 笑い返すこともなく友人との話を再開する俺は、先に1人カレーを完食していた。 友人が食べ終わるのを待っている間、話を聞きながらまた食堂を見渡していると、涙目でカレーを見つめている堀内がいる。 「――ク」 辛いの苦手なんじゃないか。 思わず笑いをこぼしてしまった。
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