359人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「な、なに食べてるんですか?」
“大学では話そ”
その俺の傲慢な言葉に文句も言わず、あれから、堀内から話し掛けてくることが増えた。
相変わらず噛むし、敬語も抜けないけど。
「激辛カレー。食べる?」
友人に対するノリで、何気なく言ったんだ、俺は。
なのに堀内からは何の返答もなく、その代わりに、真っ赤にさせた顔が俺を見下ろしてくる。
「食べる前から赤くしてどうするんだよ……」
「ヘヘ。あの、ちょうど何を食べようか悩んでたので、頼んできます。ありがとう」
「え」
そそくさと注文を言いにいく堀内の姿を追いながら、食えるの?と一瞬、いらぬ心配をしてしまう。
「もしかして、馬木って辛いの得意?」
「あー、得意ってこたないけど、嫌いじゃない」
「汗1つかいてないし。俺なんて、さっき食った一口で汗出てるよ」
「肌寒くなってきたし」
「ハハ、季節関係ねぇって」
友人と談笑していると、暫くして堀内が戻ってくる。
両手でトレーを持って、向かいのテーブルに1人で座った。
手を合わせる堀内は俺と目が合うと、へにゃっといつものように柔く頬を緩める。
笑い返すこともなく友人との話を再開する俺は、先に1人カレーを完食していた。
友人が食べ終わるのを待っている間、話を聞きながらまた食堂を見渡していると、涙目でカレーを見つめている堀内がいる。
「――ク」
辛いの苦手なんじゃないか。
思わず笑いをこぼしてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!