霞む瞼の裏

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「なに、思い出し笑い?」 友人の会話に笑うところなんてなかったのに目を細める俺に、1人が聞いてくる。 「ちょっとね」 会話を中断する友人に答えると、俺の前に座っている野崎が後ろに首を回して堀内を見つける。 「あの子、1人で座ってるじゃない」 「あぁ、そだね」 「そだね、って。冷たいなぁ」 野崎が笑うと、細い垂れ目の目がなくなってしまう。 高校が一緒で、この面子の中だと一番俺のことを知っている人間。 周りの同年代を一列に並べたら頭1つ分秀でるような大人で、人当たりが良くて温厚で、周りをよく見ている。 当然俺は、そんな野崎には堀内との事の始終を真っ先に話していて、堀内と付き合うようになった経緯も全部伝えていた。 「え。あの子が馬木の初めての彼女? 見るの初めてなんだけど」 「俺も俺も。紹介しろよ」 「1人で食ってるし、こっちに呼んでやろうよ」 何を言うか。 この会話のきっかけを作った当人をじとっと見ると、野崎が苦い笑みを浮かべる。 「別にい、」 「ねぇねぇ」 あの人にそんな気遣いはいらないと言おうとした横で、友人が堀内に声を掛けた。 「ちょ、いいって」 いい奴等なんだけどね。 おたくら、時々お節介よ。
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