359人が本棚に入れています
本棚に追加
「最近、家に入れてくれないね」
堀内と付き合い始めてから、ある人からこんなメールが届いた。
友達以上恋人未満。
言ってしまえば、ヤり友だ。
相手は8歳年上の社会人、深瀬さん。
性別、もちろん男。
出会いは――表向きでは“オフ会”だけど、現実は……まぁ、そこに行けば同種がいるっていうスポットがあって、そこで会った人。
自分の中に、女を家に入れてしまったという疚(ヤマ)しさがあるのか、堀内が家に来た日から深瀬さんを家に呼んでない。
「駄目、汚いから」
そう返事を返すと、深瀬さんはそれ以上何も言ってはこなかった。
あの人とは本当、後腐れのない関係を築けていると思う。
でも、このままずっと深瀬さんを家にあげないっていうのは、俺としても問題があって。
ホテルに行ってまでするのは好みじゃないし、家でまったりして、その流れでそうなるってのが俺は好き。
――部屋の匂い消し買いに行くか。
堀内が帰ったあと暫くの間、シャンプーなのかなんなのか、俺からはしない匂いがする。
それが花なのか果実の匂いなのかは分からないけれど、俺の使っている柔軟剤の匂いではないのは確かだ。
「深瀬さんに何か突っ込まれたら、芳香剤だって言えばいいかな」
そう思うけど。
女の匂いが残った部屋で男2人が抱き合うって、ね。
今度堀内が家に来ることがあったら、なんの匂いか聞いてみようと思った。
最初のコメントを投稿しよう!