霞む瞼の裏

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「ほら、ほら。1人じゃ味気ないでしょ」 友人の1人が席を立って、堀内のトレーをわざわざこっちのテーブルまで運んでやる。 食事を取り上げられては堀内も移動するしかない。 俺の隣の席が空いていたため友人はそこにトレーを置くと、一仕事終えたという顔で自分の席へと戻る。 「お、お邪魔します」 男の集団の中に、女がポツンと1人。 堀内はスプーンも持たないで、野郎共の視線を避けるように真下を向いていた。 流石に見てられなくて、 「食べなよ」 と、1人にしか聞こえないような声で言う。 「は、はい」 友人の何人かは自分達の会話を再開していたが、野崎や堀内の近くに座っている奴は、まだまじまじと堀内を見ている。 「……」 息を凝らして食べたそうにカレーを見下ろす堀内。 でも周りの目が気になる堀内。 堀内のスプーンは、未だカレーをすくわない。 ――ハァ、なんで俺が……。 「ちょっとお前ら……野崎も。見すぎなんだけど」
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