霞む瞼の裏

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「え、えと」 「馬木の彼女なんだから、必然的に俺達の身内ってことだよね?」 「えっ。あ……え?」 見事に畳み掛けられる堀内は明らか動揺していて、いっぱいいっぱいなのが伝わってくる。 その光景をずっと見守っている野崎に視線を送ると、やれやれと笑みが返ってきた。 俺は小さなため息を吐いて、右肩をあげて応える。 「あの、それは、えと」 別に、この人があたふたしてようが俺はどうも思わないんだけど。 なんかプルプル震えてるし、そろそろ落ち着いて食わせてやれ、と。 「お前ら、その辺で――」 「馬木のことよろしくね」 あ? 善として口を開いた俺の言葉に、友人が綺麗に被せてくれる。 さっきまで居心地が悪そうにしていた堀内は、眉を上げてパァっと顔を明るくすると、 「わ、私のほうこそ。宜しくお願いします」 俺の方に体を向けて、深く頭を下げてくる。 「う、うん」 俺はその気迫に負けて頷いてしまう。
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