霞む瞼の裏

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「あ……れ? もしかして馬木、言ってなかった?」 うそ、ごめん、と何故か突然謝られる。 みんなの視線の先を見てみると、隣に座っている堀内がなんとも言えない顔をしている。 「……」 ぽかんとして、目が点になってて、その奥から泣きそうな表情が覗いてる。 食堂は相変わらず賑やかなのに、俺達のいるテーブルだけが静かになった。 「なに、別にいいよ。言ってなかったけど、理由なんてないし。この人が知っても知らないままでも、何も変わらないだろ?」 「いや、でも……」 俺が空になったコップをテーブルに置くのと同時に、イスが引かれる音がした。 一斉に全員の目がそっちを向いて、俺も見ると。 「昼休み終了2分前」 トレーを片手にテーブルにイスをしまう宮川が、スッと目線を上げて言う。 「は、うそ、マジ? やべ、つい話し込んじまった」 「堀内さん、また今度、お昼一緒にしようね」 「――え、あ、はい」
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