359人が本棚に入れています
本棚に追加
今日は理由があったから、仕方なく家に上げた筈なんだけど――。
「え。それであってるけど」
聞けば、ちゃんとレポートの出し方から期限まで理解している。
「う、うん……」
少し眉を上げた堀内は、罰の悪そうな顔をしてテーブルに視線を落とす。
こいつ……。
「もしかしてアンタ、俺んち来るために嘘ついた?」
俺は別に、声を大にして言ったわけじゃない。
それなのに堀内は、ヒッと息を飲んで勢い良く頭を下げる。
「ごめんなさいっ」
「嘘つかなくていいから……来たいなら正直に言いなよ」
顔を上げて目を悪くした堀内を見て、あーあ、いらんこと言ったな俺、と明後日の方向を見る。
この調子じゃあ、いつまでたっても深瀬さんと会えない。
――♪……♪♪
テーブルの上の物を片付ける堀内をぼんやり眺めていたら、突然携帯が震え出して着信を知らせる光を放つ。
「ごめん、電話」
「あ、はい。わ、私はスリープになっておきます」
お前は携帯か、と声に出さずに突っ込むと、鳴り続ける携帯を開く。
画面には、深瀬さんの名前が出ていた。
「もしもし」
『あ、ごめん。今、大丈夫?』
携帯の向こうから、歩行者信号の電子音が聞こえる。
最初のコメントを投稿しよう!