湯沢 聖

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『気づかなかったのか? そらちゃんはお前が初恋だったんだぞ。婚約者なんてつれて来て複雑なんだよ』 『はつこ……い』 頭を殴られたような衝撃が走り、ただただ呆然とするばかりでした。 でも君は、僕を忘れて楽しそうにしていたのに。 それとも僕と君の時間の中には、彼女をいれたら駄目だったのですかね? でもね、そらちゃん。 香織さんは僕が何をしても赦してくれるんですよ。 誰を抱いても、一夜の過ちを犯しても、 約束さえ守らず、彼女を試すのが快感。 香織さんは正に理想でした。 動いてほしい場所で動き、して欲しい事は全てしてくれる。 朝だって、気持ちよく動いて起こしてくれる。 詮索はしない、会話はいらない、大人の楽な関係。 彼女に別れを告げられる前までは、ずっとそう思っていたんです。 「お兄さん、その指輪、どうしたの?」 車に乗り込んだそらから、訝しげに尋ねられてしまいました。 僕の薬指にも、そらと同じシルバーリングが嵌められていたからです。 「今そらが付けているリングと御揃いです。2つセットでそらのご両親から頂きましたよ」 「ふぅん。変なの」
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