速水 そら

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速水 そら

並べられたサンプル写真に、花言葉が書かれた人気の花たち。 花嫁さんは目を輝かせてそのパンフレットに釘つけになっていた。 お兄さんの丁寧な説明も説得力があり、何度も何度も頷いている。 私やお兄さんにも出された一口サイズのケーキと紅茶に目もくれず、夢中で打ち合わせは進んでいった。 受付嬢たちからの視線は痛いけど、それよりも上品に微笑むこの香織さんの方が不気味だ。 仕事ができる女感が半端ない。 私も愛想笑いなら得意だけど、この人のはまたちょっと違うんじゃないかと思われる。 仕事にプライドてか持ってそう。 打ち合わせも終わり、お兄さんがサンプルについて担当と確認している時だった。 「速水さん、でしたっけ?」 「…………そうですけど」 香織さんに呼び止められてしまった。 腕組みをして私を上から下まで値踏みするかのように観察された。 「貴方、ハローワークにウチを紹介されたんでしょ? 他に決まったの?」 「あー……、まだ考え中ですが」 「頭で考えてもしょうがないでしょ? 此処で研修受けてみない?」 「はい?」 もしかして私、勧誘されてる?
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