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「スタッフが全然足りないし、無能ばかりで困ってるのよ。研修中は社員と同じ給料出すわよ」
「いきなり言われても、私にも予定が」
「どうしました? そら」
私と香織さんが話しているとお兄さんが笑顔で近づいてきた。
「ねぇ、この子、1週間で良いから此処で働かせてよ」
「へ? そらをですか? 受付に?」
「ブライダルプランナーに、よ。ちょっと貸して」
……トントン拍子で話が決まっていってる気がする。
憧れてたし制服は可愛いし、働いてみたい気もするけど。
このオバサンは正直、好きじゃない。
「すみませんが、私はー……」
「貴方、別にやりたい事も目標も無さそうなのに、何が嫌なの? 受付嬢しかできない無能なの?」
「――香織さん」
「向き不向きはやってみなきゃ分からないのに、何で逃げるのかしらね」
「申し訳ないですけど、私、此処で働く気は今無くなりました。全く、1ミリもありません」
偉そうなオバサンを睨み付けながら。
「でも、忙しくて人手が足りないからと頭を下げるならば1週間手伝っても良いですけど?」
私がそう笑顔で言うと、オバサンは冷たい瞳を更に細く冷たく尖らせた。
「ええ。じゃあお願いしようかしらね」
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