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「あんな言い方はよくありませんよ」
ちょっとだけ口を尖らせたお兄さんが、私を見下ろした。
フラワーアレンジメントを作成中のお兄さんの横で、
履歴書を記入しながら明日の用意をしていた時だった。
「失礼なのはあっちだけど?」
「でもせっかく声をかけて貰ったのに。険悪な雰囲気では仕事は楽しめませんよ」
「………お兄さん。世話好き婆さんみたい」
「せっ!?」
「あの香織さんって人が居なきゃ、人手不足は解消するらしいわよ」
「え……?」
「――何でもない」
胸の奥がズキズキ痛む。傷痕から嫌な気持ちが私の中に広がっていく。
あんな女の話、しないで。
あんな女を、庇ったりしないで。
「てかプランナーって資格とか要らないんだ?」
ああ、響も仕事手伝ってたんだった。
腕捲りしてるから、縛った痕がまだ生々しく残っている。
「求人欄には特に書かれてないよ」
「嫌な奴が主任の方が下は結束できるかもよ。良かったじゃん、憧れの式場で。
あそこ、雰囲気良いよな、聖さん」
響が背中をつつくと固まっていたお兄さんは、少しだけ表情を和らげた。
「はい。あそこで式挙げたいですね。僕とそらの」
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