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「俺、そらの髪、セットしたいなぁ」
「あは、素敵ですね」
にこやかに笑いながらお兄さんは最後のアレンジメントを完成させた。
オレンジ色と黄色の花で暖かく優しい色ありの作品になってる。
1つひとつ、綺麗で美しい作品に仕上がっていた。
お兄さんだって、最初は嫌いだったかもしれないけど、今は誇りを持ってやってる。
響だって、美容師の仕事に頑張ってる。
手に職を持つってのも羨ましいと思う。
私にはそんな誇りを持って仕事、した事なかったし。
誰かに喜んで貰えるって、必要とされるって、
どんな気分なんだろう。
「僕もう終わりますんで、夕食頼んできて貰って良いですか?」
「いいよ。響は作らないんだね」
「俺はこんな痛々しい手じゃ作れないだろ」
わざと手を触りながら、しなをつくる。
「じゃあ、俺ら先に行くよ。ハンバーグ?」
「はい。目玉焼きは半熟で」
そう言って、お兄さんは片付け始めた。
手伝えば早いのに、店を出る響に首を傾げてしまう。
でも私が店を出るとすぐに、私の手を掴み、顔を覗き込まれた。
「そら、今どんな気持ち?」
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