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「そらっ」
「響は嘉山っていうオジサンが、お兄さんには香織さんが。
結局あんた達二人は、現実から逃げて、私なんかで妥協してるのよ」
「違うって! そんな話がしたいんじゃなくて」
「じゃあ逃げないでぶつかって。それでも、還ってくるなら、……3人でも良いよ。別に。
その代わり、二度と消えたら許さない。……許せないから」
「…………」
苦虫を噛みつぶしたような、それでいて傷ついたような、不安そうな顔で横を向いた。
冷たく言ってしまったけど、
響は怖いんだと思う。
嘉山の前で、自分をさらけ出すのが。
汚れるのが、怖いんだと思う。
だから選んで欲しい。
また急に消えちゃうよりは、ちゃんと考えて欲しい。
「あれ? まだ静也の所に行ってなかったんですか?」
一階の鍵をかけながら、お兄さんが私たちに声をかけた。
「大丈夫。注文はしてるから。お兄さんを待ってたの」
「早く、行こーぜ?」
「?」
お兄さんは不思議そうな顔をしてから、響の後を着いていった。
私も二人の他愛ない会話を聞きながら、静也くんの待つ喫茶店へと入っていった。
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