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「速水さん、まずは化粧からね」
テーブルに大きなコスメボックスを置くと、次々にコンシーラーや口紅を並べ出した。
朝7時という久しぶりに規則正しく起きて、ばっちり化粧して、9時に指定された通り行くと、香織さんが既に待ち構えていた。
そして連れていかれたスタッフルームで、いきなり化粧について講座が始まってしまったのだ。
「スタッフは支給された化粧品で、統一した化粧の仕方をしているから守って。
そのつけまつげは、絶対に止めて頂戴」
そう言われて、眉毛の書き方やら口紅の合わせ方、
髪の毛の結び方などの説明や、
アイラインの禁止、アイシャドーは茶以外不可などなど、細かい指導が入った。
要は、地味で控えめで、清潔感がある化粧のみ。
今の香織さんが指導されたまんまの、地味な化粧だから納得してしまった。
「貴方、見映えがする綺麗な顔立ちだから、化粧は特に気を付けて」
「はぁ」
「式場は花嫁が主役なんですから。新郎がプランナーに目を奪われたら不安になる花嫁もいるの。不安定な時期だから」
「分かりました」
「じゃあ、その化粧落として。スタッフ用の化粧にし直して」
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