速水 そら

7/26
前へ
/39ページ
次へ
「速水さん、まずは化粧からね」 テーブルに大きなコスメボックスを置くと、次々にコンシーラーや口紅を並べ出した。 朝7時という久しぶりに規則正しく起きて、ばっちり化粧して、9時に指定された通り行くと、香織さんが既に待ち構えていた。 そして連れていかれたスタッフルームで、いきなり化粧について講座が始まってしまったのだ。 「スタッフは支給された化粧品で、統一した化粧の仕方をしているから守って。 そのつけまつげは、絶対に止めて頂戴」 そう言われて、眉毛の書き方やら口紅の合わせ方、 髪の毛の結び方などの説明や、 アイラインの禁止、アイシャドーは茶以外不可などなど、細かい指導が入った。 要は、地味で控えめで、清潔感がある化粧のみ。 今の香織さんが指導されたまんまの、地味な化粧だから納得してしまった。 「貴方、見映えがする綺麗な顔立ちだから、化粧は特に気を付けて」 「はぁ」 「式場は花嫁が主役なんですから。新郎がプランナーに目を奪われたら不安になる花嫁もいるの。不安定な時期だから」 「分かりました」 「じゃあ、その化粧落として。スタッフ用の化粧にし直して」
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加