湯沢 聖

2/5
前へ
/39ページ
次へ
『そうですね。誰でも良いです。その人が離れない保障なんて無いですし』 『可哀想な人ね』 『寂しい人なんです。慰めて下さい』 それ、は、ただただ言葉を転がすだけの、 体だけ求める時の、挨拶みたいな駆け引き。 馴れてしまった僕は、ただ笑う。 それで大体分かります。ああ、この人は拒絶しないな、と。 香織さんも、そうでした。 強気に笑いながらも、一夜だけの楽しさを、簡単さを知ってる人でした。 楽だし、大人だし、包容力もあるし、 こんな甘っちょろい僕を寛大に赦してくれる人でした。 ブライダルプランナーは忙しくて、会えない日もたまにありました。 そんな日は、誰かと寝たり、遊んだり。 ただ思考に更けて眠れない夜を、一人で過ごすには退屈で。 温まれるなら誰でも良かった。 だから香織さんにいっぱい甘えました。 全て香織さんは受け止めてくれたから、彼女の年齢も考えてプロポーズもしました。 ――この人はどこまでなら赦してくれるだろうか? ――誰と寝ても一夜だけなら、構わないのだろうか? 結婚しても、それを楽しむために。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加