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「宮川ぁ。野崎はもう俺の味方じゃない……」
「えー……。俺は裏切った覚えないんだけどなぁ」
野崎の困り顔を頭に浮かべながら、宮川の肩にコテンと頭を乗せる。
堀内については、宮川が一番俺の気持ちを分かってくれると思う。
みんな声を揃えて『もっと素直になれよ』『あんな態度じゃ堀内さんが可哀想だぞ』だもんな……。
1人じゃないという安心感からか、こうして宮川の肩に寄りかかっていると気分が落ち着いた。
「……香水変えたか?」
「んや? つか俺、香水つけない。柔軟剤でしょ」
ブルゾンの中からシャツを引っ張り出してクンと嗅ぐと、最近気紛れで買った柔軟剤が香る。
「やっぱりポプリの方がいいな……」
「俺はどれも同じだと思うけど」
「全然違うって。いつも買ってるポプリのやつは、花畑にいるような感じがする」
「分からない……」
――宮川には悪いことをしたと思ってる。
こいつは俺以上に女子と関わらないし、『バカでうるさいから』と女嫌いを公言しているくらいなんだ。
だからきっと、いきなり俺達の中に入ってきた堀内の存在を快く思っていない筈。
そしてそれを堀内も悟っているのか。
食堂のテーブルに座る時や、今みたく放課後どこかに寄るのに野崎に誘われると、一番に俺の顔色を伺って、その次に宮川の顔をちらりと見る。
ごめんな、と声には出さず宮川の頭を撫でると、
「っ……怒るぞ」
と低い声で注意され、俺の癒しが離れてしまう。
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