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でもまぁ、
「野崎はたまに、突拍子もないこと言うよね」
明らか2人が苦手意識持ってるって分かってるのに、今も宮川と堀内を残して店を出て来たり。
「たまに鬼畜」
「人間誰しも、どこかでバランスとってなきゃ息が詰まるでしょ。端から見れば悪者でも、心の内では相手を理解しようとしてたり、人の気持ちになって自分が落ち込んだりしてるように」
「悪者って、俺のこと?」
「そだよ?」
“悪者”
そっか。周りから見た俺は、これだ。
「納得。……でも、相手の気持ちになって考えられる人間なら、人前で別れ話なんてしないよ。堀内を全く相手にしないなんてこともないんじゃない」
コートのポケットに片手を入れて、さっきから縁石に乗ったり降りたりを繰り返す野崎は、
「あー、そうそう」
と、何かを思い出したように言って俺の隣に並ぶ。
「あと、馬木は後になって後悔するタイプだよね。堀内さんのこと、家に帰って反省してたりして?」
「……」
襟元に顔半分を埋めて口を閉じる俺は、何も言い返せなくて野崎に恨めしい目を向ける。
「俺はそんな、馬木の悪者になりきれないところが好きだよ?」
「じゃあ……人が好いって思われてる野崎は、俺らの知らないところで悪いことしてんのかよ」
「えー、どうして?」
「誰しもバランスとってるんだろ?」
「……フ。意地悪だね」
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