溶かして固めたキモチ

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「ハハ。うん――堀内さんはちゃんと馬木のことが好きだよね。馬木だから、好きになったんだよ」 「……え。俺を好きになった理由とか聞いてたりするの?」 教えてよ、と軽く言えば、野崎に突っぱねられてしまう。 「知りたいと思った時に、本人に聞いて下さい。ていうかお前、他人事みたいな聞き方すんな?」 「……」 「じゃあ、俺こっちだから」 「……言わなくても分かる」 俺は別れ道の真ん中に立って拳に息を吹き掛けながら、若干上り坂になっている道を帰っていく野崎を見送る。 さて、とアパートへ続く道に爪先を向け、最後に野崎に目をやると、野崎は足を止めてこっちを見ていた。 「なにー?」 少し声をあげて言えば、周りの家に反響して思ったより声が響いた。 「お前が考えて決断したことなら、もう何も言わないから」 あぁそのこと……、俺は口をだらしなく開けて空を仰ぐ。 「だから、ちゃんと向き合ってみること。彼氏らしく接してあげること。それでも彼女をそういう目で見られなかったとしても、その時は皆、馬木を悪者だとは思わないよ」 「……」 「不誠実な人間にはなってほしくないんだ。俺からのお願い」 「でも……」 「自分の中の当たり前を変えるのは凄く難しいことだと思うけど、もう少し、頑張ってみて」
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