溶かして固めたキモチ

18/32

586人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
  ――ヴー、ヴー また震え出す携帯。 俺は腰を上げて、画面を確認せずに電話に出る。 「はい」 『馬木』 お前か……っ。 さっきと同じ声に俺は、何故電話を切ったのかは聞かず、どうした?と尋ねながらまた夜道を歩き始める。 『あの女、』 「堀内な」 『……。「もう遅いから1人で帰ります」とか言って……タクシー拾って帰っていった』 「え」 ……タクシー拾ってまで、宮川との空気が耐えられなかったか。 なぁ堀内、世の男は“もう遅いから”女を送るんだと思うよ。 『俺……帰っていいか?』 「あ、うん。ごめんな、気を付けて」 『……』 「大丈夫だから。堀内が勝手に帰ったんだもんな? 宮川はちゃんと、野崎に言われた通り役目を果たそうとした」 電話を切らない宮川に俺が言うと、暫くして『そうじゃない』と返ってくる。 『くそ……。馬鹿で、うるさくて、だから女は嫌いなんだ……』 「お、おぉ。どうした」 『本当に腹が立つ』 ……堀内と何があったの。 『なんでこっちが気を遣ってやらないといけない。あれこれ言って大丈夫かと推察しないといけないんだ。本当に腹が立つ』 「宮川……」 『腹が立つ、が』 ……へ?
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

586人が本棚に入れています
本棚に追加