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――が?
そこで格助詞がつけられる意味が分からない。
『堀……内は、少し……違うかもしれない』
「な、なに言ってんの宮川さん」
『分からんっ。俺は、今まで一度も喋ったことがないから……。あの女の何かを知ってるでもない、印象でしかないが……』
えぇ、まさかお前まで。
堀内が、これまで目にしてきた女と違うことなんて、そんなの分かってる。
でも、堀内だけが別格じゃないかもしれないだろ。
別に堀内じゃなくたって、女じゃなくたって。
それとも――。
歩く速度を落として立ち止まると、靴の下で砂利の音がして、同時に俺は歯を噛み締める。
「お前らさ、俺に、女を好きになってほしいとか思ってる?」
情けない。
薄ら笑いで口にした声が少し、震えてしまった。
「堀内のことをフったら、もう俺の前に堀内みたいな女は現れないって思ってる?」
だから、もっと大事にしろって、構ってやれって言うのか?
口では“偏見を持たない”なんて言っておいて、本当は異常だって、健常じゃないって思ってんのかよ。
『……分からない。でも、初めてだったんだ。俺やお前が思う女の枠組みから外れた人間を見るのは……』
「……」
『悪い。俺が面を食らったからって、馬木に同調を求めるのは可笑しいな』
分からない、か。
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