溶かして固めたキモチ

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「宮川、正直すぎ」 ハ――、わざと深く息を吐いて、乱れた気持ちを落ち着かせる。 「俺もごめん」 『いや……。野崎は、なんて』 「俺が考えて出した答えなら、何も言わないって」 『そうか』 「宮川は、何か言わないの?」 『……別に、お前達が別れようが俺には関係ない』 そりゃそうだ。 「――堀内は」 『ちょ、ちょっと待て。俺は人の相談になんて乗れないからな』 「ハッ、分かってるって。今1人で歩いてるんだ。お前もだろ。独り言だから付き合え」 『あ、あぁ……』 堀内は、不慮に俺の体が当たったりなんかした時、それだけで顔を赤らめたりする。 優しくしたわけじゃない、キスをしたわけでもないのに。 大学じゃ、人と挨拶を交わすことはあるみたいだけど、未だに特定の誰かと一緒にいるところは見たことがない。 「あぁでも、就職した恵子っていう友人はいるみたい」 『……おい、独り言じゃなかったのか?』 「まぁまぁ」 いつもしっかりしろって言われてんだって。 “恵子ちゃん”の話をする堀内は楽しそうで、一番いい顔をする。 堀内は人前で食事をするのが苦手みたいで、先に食い終わった友人達が席を立つとようやく食べ始めるんだよ。 ――ほら、知ってるんだ。 全部じゃないけど、知ってるし、見てきたんだ。 「……それでも彼女として見てやれない。こんなの、どっちの為にもならないだろ」 航空灯を点滅させ飛んでいる飛行機を見上げながら呟くと、星屑を散りばめた夜空が吐いた白い息と言葉を吸いとってくれる気がした。
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