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「今日お前、よく喋るね」
『うるさい』
「ハハ」
遠目にアパートの外観が見えてきた。
宮川が電話を掛けてくるのも珍しいけど、こんなに話をしたのは初めてだな。
『……』
「宮川?」
『あ、いや。さっきのお前の独り言……。ちゃんと見てたんだなって思って』
端から見たら俺は“悪者”だもんな。
「いいの?」
『え?』
「俺がここで“もう少し考える”ってなったら、昼も、時々放課後も、また堀内は一緒だよ?」
『俺は関係ない』
ぶっきら棒な返事が返されて、俺はうっすらと笑った。
「なら、よかったよ」
『……なぁ、考えたんだが』
考えた?
何を、と聞けば。
宮川は突然、面白いことを言い出した。
『男として見てみるとか、どうだ?』
宮川の口からそんな言葉が出てきて、俺は、テレビの中でよく大袈裟にこけている芸人の姿を思い浮かべる。
まさにあんな心境。
「ハハ、男?」
『女として見るから駄目なのかもしれない』
ねぇ宮川、現実逃避するほど女が嫌いかい。
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