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「あんなにどもる男なんて嫌だ」
『お前の男の好みは聞いていない』
「なら、堀内のどこを男として見るよ?」
『……』
「ハハ」
堀内は……女だ。
男として見てみるとか、他のカテゴリだったらって考えるのじゃ駄目なんだよ。
それから、堀内の男として見れる部分をあれこれ探しているのか、無言になった宮川とは電話を終え、俺はアパートへ帰った。
せっかくバイトが休みだっていうのに。
夜は、深瀬さんを家に呼ぶつもりだったってのに。
夕飯と風呂を簡単に済ませた俺はベッドに横になると、それから眠るまで、喫茶店での会話を思い出していた。
『別れてほしい』それが、何度も俺の声で再生される。
そして。
“あの……私……”
堀内の、少しトーンが下がった声。
野崎に口を挟まれなかったら、あのあと堀内は何か言うつもりだったんだろうか。
そしたらすんなりこの関係も終わって、今頃俺は、このベッドで深瀬さんと肌を重ねていたかな。
こうして何もない天井を見つめながら考えることもなく、平気で……。
それとも、あそこであの言葉はなかったな、と今と同じように自分を責めていたんだろうか。
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