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部屋の明かりを消して真っ暗闇の中、意識を手放す直前に“今日は寝覚めが悪いだろうな”と思うけれど――
「くぁ」
朝、携帯の声に起こされた俺はいつもより早く目が冴えて、案外気分はさっぱりしていた。
試験最終日の今日、大学では普段に増して周りの女子がキャッキャと騒がしい。
正午を迎えると、やっと全ての試験が終わる。
「えーっ、作らなかったの?」
「そっちは?」
「作ってないよ?」
「なーんだ。アンタも市販なんじゃんっ」
カバンに筆記用具をしまい帰る支度をする俺の視界に、女子の塊が右にも左にもある。
学部に在籍している生徒の大多数が男だというのに、1脚の机に女3人も集まれば、男10人分のやかましさはあるんじゃないか。
「あー、やっと終わった」
俺はカバンの上に両手を伸ばして上体を伏せると、お疲れ、と隣から野崎の声。
周りを見回しながら、
「馬木のモテ期も落ち着いたかな?」
と笑いかけてくるから、なんで今それ?と俺は眉をひそめる。
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