溶かして固めたキモチ

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モテ期ねぇ……。 2年目の後期に入ったばかりの時は、目まぐるしい毎日だった。 中高と無縁だった女に突然話し掛けられるようになって、休み時間になる度に主旨のない話を聞かされ、笑ってよと乞われれば愛想笑いをして適当に相槌を打っていた。 それを思うと、今どんなに落ち着いた日々を過ごせているか。 女子の皆様には分からないだろう。 「春休み、どこか行こうか」 「俺はバイトがあるんだよ……。パートのおばちゃんが急に辞めて、人足りてないんだ。野崎、来なよ」 「えー、ヤだよ」 爽やかな笑顔でフラれてしまう俺は、 「どう?」 後ろを向いて、宮川に声を掛ける。 「俺はサークルがあるから」 「あぁ、そうか。写真好きだね」 宮川は廃墟写真を撮るのが趣味で、キャンパス内を歩いていると、たまに腹を地面につけて風景を撮り始めたりするからびっくりさせられる。 「ねぇ、また今度写真見せてよ」 「部屋が綺麗な時ならな」 いつも綺麗だろ、と笑いながら宮川の顔を見れば、宮川の視線は俺の後ろに向けられていた。 なに?
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