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“泣きそうな顔してたから”
ずっとこっちに背を向けていたのは、泣きそうなのを悟られたくなかったからなのか。
俺が別れを告げて、それを取り下げると、堀内は泣きそうになるんだ……?
野崎と宮川にこの後の予定を尋ねる友人の声を耳に入れながら、俺はカバンの中にある小さな箱のことを思い浮かべてボーっと考えた。
――トン
「?」
腕に何かが当たって目を向けると、野崎の肘だった。
「『また春休みに連絡する』だって」
「へ?」
見れば、友人の姿がなくなっている。
カバンの紐に頭を潜らせる俺の横で、野崎が机に上体を突っ伏せて上目遣いで見てくる。
「ん?」
「ちゃんと言えました」
「……そのことだけど。深瀬さんと会うのも駄目なの?」
「さぁ? 馬木はどう思うの」
俺は少し考えて、
「宮川」
お前はどう思う?と、口には出さないで後ろを向く。
「俺に聞くな」
「ですよね」
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