割引きチョコ(前編)

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「――野崎」 アウターはパステルグリーンのパーカーのみと、春を思わせる格好で野崎が立っている。 「寒くないの?」 「外に出たら日差しが暖かかったから、ジャケット脱いできた」 「代謝いいからな、お前」 野崎のカゴの中の商品をレジに通しながら店の外を見ると、俺が家を出た時よりずっと晴れている。 「なに買いにきたの?」 「バイトに行く前に何か腹に入れておこうと思って」 「あぁ、今日バイト? バイト先、喫茶店じゃん。店で食べてあげなよ」 「お洒落な“カフェ”です」 「フ、一緒だろ」 「まぁ――店で食べようかと思ってたんだけどね?」 ならどうしてスーパーに?と、口を閉じてカゴの中のサンドイッチを見つめる。 「店の前で、たまたま堀内さんと会って」 「えっ?」 ほら、と野崎が手で示す方を見ると、カゴも何も持っていない堀内がいる。 堀内はワンピースが好きなのか、大学ではほとんどそれを着ていて、今日もウールのツートンカラーの膝丈ワンピースを着ていた。 「いるなら声かけなよっ」 全く気付かなかった俺は驚いて、堀内はすみませんすみませんと腰を折る。
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