割引きチョコ(前編)

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「じゃあ、お願いしま、」 「こら馬木」 俺はハッと息をこぼして笑うと、2人をしっしっと手で払う。 「うそうそ。いーよ堀内、1個買ってくれたでしょ。ほら、長話してると注意されっから、帰んなさい」 「は、はい……。じゃ、じゃあ、またっ」 「馬木、俺も行くね。残りも頑張って」 「おー」 大事そうにチョコを両手で持って野崎の後ろを付いていく堀内は、まるでカルガモの雛みたいだ。 羊、鶏、カルガモ。 ――プッ レジにやって来た客のカゴを受け取りながら、口がニヤけてしまう。 「いっらっしゃいませ」 「よぉっ、バイト」 「あぁ、こんにちは。遅い休憩ですね」 「なんだ? 今日はいつも以上に真面目に笑って仕事してんな」 「いつもこれくらい笑ってますって。マニュアル通りですよ」 「ハハッ、そうか」 作業服姿で頭にタオルを巻いたこのお客さんは、いつも俺のレジに並んでくれる兄ちゃん。 若いのにおっちゃん口調で話し掛けてくるから、すぐに覚えた。 けど、笑うと実際の年齢より幼く見えるんだ。
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