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「じゃあ、お願いしま、」
「こら馬木」
俺はハッと息をこぼして笑うと、2人をしっしっと手で払う。
「うそうそ。いーよ堀内、1個買ってくれたでしょ。ほら、長話してると注意されっから、帰んなさい」
「は、はい……。じゃ、じゃあ、またっ」
「馬木、俺も行くね。残りも頑張って」
「おー」
大事そうにチョコを両手で持って野崎の後ろを付いていく堀内は、まるでカルガモの雛みたいだ。
羊、鶏、カルガモ。
――プッ
レジにやって来た客のカゴを受け取りながら、口がニヤけてしまう。
「いっらっしゃいませ」
「よぉっ、バイト」
「あぁ、こんにちは。遅い休憩ですね」
「なんだ? 今日はいつも以上に真面目に笑って仕事してんな」
「いつもこれくらい笑ってますって。マニュアル通りですよ」
「ハハッ、そうか」
作業服姿で頭にタオルを巻いたこのお客さんは、いつも俺のレジに並んでくれる兄ちゃん。
若いのにおっちゃん口調で話し掛けてくるから、すぐに覚えた。
けど、笑うと実際の年齢より幼く見えるんだ。
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