染まる林檎色

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  大学の春休みは長い。 とにかく長い。 日中バイトをしているし、早く学校に行きたいというわけでもないからとりわけ問題はないが、野崎は暇をしているみたいだった。 野崎もバイトをしているが長期休みだからといって短時間勤務は変わらず、そんな野崎から携帯に連絡が入ったのはついさっきのこと。 今日はバイトが休みで昼前に起きた俺のところに、メールが1件届いた。 from 野崎 伉太 喫茶店においでよ。 春休み中ちゃんと野崎と会ったのはまだ一度もなかったから、俺は眠たい目を擦りながら1つ返事で了解のメールを送った。 「あ、宮川もいるじゃん」 軽く髪を整えて呼ばれた喫茶店に向かうと、4人掛けのテーブルのソファーに野崎と宮川が並んで座っている。 集まった場所は学校帰りによく立ち寄っている喫茶店で、ここで堀内に別れを告げたことはまだ記憶に新しい。 いつもは必ずと言っていいほど窓際のカウンターに座るのに、今日は違った。 見慣れない光景を見下ろして、席に着かず店内を見回すと、カウンターは若い学生で満席。 テーブルもほぼ埋まっている。
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