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“直接会って話したい”
深瀬さんの言葉も気にはなるけど――。
今は、目の前の男女のやり取りのが気になって仕方ない。
――あ。
男が体の横に置いていた手を浮かせると、体型に合っていないブカブカのチェックシャツの袖から細い腕が覗く。
そのまま伸ばされた手は、やおら堀内の二の腕を掴んだ。
ほんと、どういう関係?
目を薄めて見守り続ける。
『馬木くんの都合が悪かったら、予定通り夜でも構わないんだけど』
「え? あー……」
深瀬さんの声は耳の奥まで聞こえている筈なのに、言葉が全然入ってこない。
俺が見ていることにはお構いなしなのか、男は堀内の耳に顔を近付けていく。
この時点で俺の中で、あれは堀内の友人ではない、と結論が出た。
そんなヒョロっこい男の手なんて、払えばすぐ離れるだろ。
それともあれか、あれにも勝てないほど女の力は弱いのか。
堀内が顔を後ろに引いて拒絶しているところを見ると、こりゃヤバイやつだといよいよ感づく。
ふいに見えた堀内の横顔が、ここからでも分かるほどに青ざめていた。
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