ふたりの告白(後編)

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「ごめん、深瀬さん」              耳元で深瀬さんが何か言っていたけど、ぼんやりとそれを遮る。 「今日、無理かもしんない」 『え。何か、急用でも……』 「堀内が」 咄嗟に口から出た名前を、受話口の向こうで深瀬さんが繰り返す。 そこでやっと、堀内の名前を出してしまったことに気付いた。 『堀内?』 「あ――彼女が、体調崩して」 『か、彼女!?』 鼓膜に響く声に片目を細めながら、待ってろって言われたけど、ここは動いていいよな?と自問する。 「ごめん深瀬さん、電話切――」 『ま、待って』 引き止める言葉が聞こえて、切ろうとした携帯を再度耳に当てる。 “後で掛け直すから”そう伝えて、すぐに電話を切るつもりだった。 『好きなんだ』 「……」 す――。 一瞬、呼吸をするのを忘れる。 側に深瀬さんはいないのに。 その声に、離れようとしたら必死に手を伸ばして引き止められたような――そんな感覚を覚えた。 「……」 男を拒絶するように俯いて、背中を丸めた堀内の後ろ姿を見つめながら、携帯を耳に当てたまま固まる。
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