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門の前で向き合うと、月明かりの下、丸い瞳が潤んでいてそれくらい恥ずかしかったのかと思う。
「繋ぐの、嫌だった?」
「え……?」
小刻みに首を横に振る堀内に、『……ほらな』と俺は微かに笑む。
「傍にいるだけで嬉しいなんて思うのは、最初だけなんだよ」
意地の悪い台詞を吐くと、堀内は俺を見上げて、ただ寂しそうに微笑む。
「……俺達が付き合ってる内は、俺が他の男のことを気にするのも、恋人として可笑しいことじゃないよな」
それだけ覚えといて。そう言って、冷える手をパーカーのポケットに入れる。
視線を落とす堀内は、髪を耳に掛けながらハニかんだように口を歪めて頷いた。
「あと」
「……?」
「俺、酔ってるから」
「え?」
「公園からここまでの行動とか態度は、全部忘れて」
顔を横に反らすと、微かな笑いが混じった声が聞こえる。
「忘れられるかな」
チラッと堀内を見て、早く家に入れと肩を押した。
きっとまた、俺が見えなくなるまで見送るつもりだろ。
堀内はそんな奴だ。
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