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一歩、四月一日に近寄る。至近距離だ。手を伸ばせば、すぐに届くくらい。ベッドから身を起こしている四月一日を見下ろす形。
「……面白いなんて言って怒らない人、久し振り」
「どういう訳」
「さぁて……こんな病室じゃあつまらないのよ。閉じ込められているみたい」
こちらに伸ばされた白くて細い腕が、俺の制服を掴む。ぐいっと引き寄せられて、姿勢が崩れる。四月一日のベッドに片膝をついた。
「最低なことを言おうかしら。佐藤くん、わたしを楽しませてよ。つまらな過ぎるのをどうにかしてよ」
「……ぼくにはそんなの出来ないよ」
「……嘘つき」
淡々と、言い切られた。
「そのくせ、正直者」
「……なにを言ってるの」
「わたし、死んじゃうわよ?」
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