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ちろ、とさくら色の舌が、唇を湿らせた。四月一日の瞳にも薄い緊張の膜が張っていることに気付いた。ふ、と鋭く息を吐く。それを合図のように、四月一日は視線を合わせてくる。
「あの、ね」
「あのさ」
四月一日の話の腰を叩き折る。
「そんなにつまらないの?」
「つまらない、わよ―――ッ!!」
「こういうことしたら面白いの?」
四月一日の唇から唇を離して囁く。真っ白で華奢な作りの手を握る。強く握ったら折れそうだったから、そっと。
「……慣れてる、ね?」
「……まぁね。女なんて、掃いて捨てるくらい言い寄ってきたから」
「ひっどい人。どうせ皆を捨てたんでしょ?」
「……いや」
言い寄ってくるのは女。別れを切り出すのも女、だった。理由は解らない。
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