犬鬼灯 【イヌホオズキ】

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「……で?こんなんでいいの?つまらなかったら言ってくれる」 「そうだなー……」 遠くを、四月一日が見た。ここじゃない、ところ。 「……はは、ごめんね佐藤くん。ちょっと離れてちょうだい」 「……ん」 ちら、と病室のドアの方を見た。少し前に看護師がいたのは知ってたりする。初々しい看護師だ。 「あっ、あっ、あっ、あの!邪魔してごめんなさい!」 「いえ、僕がいけなかったです。気付かなくってすいません」 さらっと言って微笑む。イイコの振りにはちゃんと年季が入っているのだ。四月一日も恥じらうように俯いているけど、肩が震えているのは見えてる。顔が真っ赤なのは恥ずかしいとかの理由ではないだろう。
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