犬鬼灯 【イヌホオズキ】

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「おい、佐藤」 「はい?」 担任の声に、笑顔を張り付けて振り向いた。高校二年生に成り立てのこの季節、先生に呼ばれることなんてそうない。 「お前さ、確か学級委員長になってたよな」 「はい、なりましたけど……」 内心なんか仕事でも頼まれるのかとげんなりする。去年ももれなく委員長だったから、その雑用の多さは知ってる。本当は今年はなりなくなかったんだけど、押し付けられた。 「じゃあ、悪いんだけどこのプリント届けてきてくれ」 校章の入った茶封筒を渡された。ついつい受け取ってしまった。 「はぁ、届ける……誰にですか」 「わたぬきに。すまんがよろしく頼む」 「いや、ちょっと待ってください。わたぬきって誰ですか」
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