犬鬼灯 【イヌホオズキ】

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「あら?どちら様?」 ふわふわの、甘い声だった。 どこもかしこも白い病室の中の、真っ白のベッドカバーの中にいたのは、一人の細い少女だった。病的に白い肌と、薄茶の髪と瞳。声と同じふわふわの長い髪が羊みたいだな、なんて思った。 「ごめんなさい、ドア。閉じてください」 「あっ、すいません……えっと……その、」 どもっている俺の気持ちを汲み取ってくれたのか、賀山がサクサクと紹介を進めた。 「佐藤っていうんだ。僕たちのクラスの委員長」 「そうなんですか。改めまして、初めまして。わたぬきようです。漢字は、これ」 ベッドの近くにあったメモにさらさらと字が書かれる。恐る恐る近寄り、覗き込んでみる。因みに賀山は椅子に座っていた。
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