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「え?なんて?」
「あぁ、うん……光、絵描いてないのかなって。絵の具の匂いがしなくなってる」
何処か辛そうに、四月一日は目を伏せた。睫毛が長くて、綺麗に生え揃っている。夕焼けの朱色の光が、真っ白の病室を薄く染めた。
「……絵、好きって言ってたよ。今は……スランプかなにかじゃないのかな?」
「うん……」
「あっ、そうだった。賀山がこれを見せろって」
ズボンのポケットから白色の絵の具を出した。四月一日は、もともと大きな目を大きく見開いた。す、と差し出された手のひらにそっと乗せる。
「白色、白色、白色、白色……白い子供たち、永久に戻ることなく。戻る場所は気がつけば、消えたけど。きっと記憶の中にはあるだろう」
「……四月一日?」
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